あたしの心、人混みに塗れて
「すぐに言えなくてほんとごめん。ただ、ほんとについ最近のことだし、あたし自身本当に付き合ってるのか自覚があんまりなくて……」

「最初はどっちから告ったの? 川島くん?」

「いや、あたしだけど……」

「まじで? けっこう意外。智子そういうことあんまり本人に言えないタイプじゃない」


その通りだ。本来ならば、蒼ちゃんに告白なんて一生できなかったと思う。でも、あの時は正気じゃなかった。あの時のことを説明するのは今はあまり口にしたくないから黙っておいた。今度時間があるときにゆっくり話そう。


「で、川島くんも好きって言ったのね。それで、付き合おうはあっちから?」

「うん。セフレと別れてくるから、そしたら付き合おうって……」

「うわ、軽いわね。川島くんにとってセフレはちょっとした火遊び程度だったってことかしら。それとも、よっぽど智子のことが大好きなのか」

「……さあ」


確かに、セフレのことを考えれば、蒼ちゃんは本当に軽いと思う。だから少しひどいこともあっさりと口にできたのかなと思ったら、純粋に理央って子をかわいそうだと思った。


< 176 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop