あたしの心、人混みに塗れて
「絶対関わりたくないね」

「ていうか、智子は半分その争いに入ってるようなもんだけど」

「やめてよ。せめて5%くらいでしょ」

「いやいや、半分よ。元凶の川島くんと付き合ってるんだから。ほんと、女って怖いわねえ」

「ていうか、女をそこまでさせる蒼ちゃんがすごいわ」


あたし達は同時にため息をついた。知らず知らずのうちに女の戦いに巻き込まれてるとか最悪じゃないですか。あたしにどうしろってのよ。


……なんてことを、休日に蒼ちゃんの部屋で二人でのんびりしながら話した。


「ふふっ、女の子怖ーい」


なんて笑いながら言うもんだから、あたしは蒼ちゃんの腕を軽く叩いた。


「誰のせいでこうなったと思ってんのよ」

「えー、俺のせいー?」

「蒼ちゃんがややこしいことするから悪いの。鳴海さんが好きなこと、知ってた?」

「うん。だいぶ前に告られたよ。断ったけどね」

「それでも関係を続けてたわけでしょ? 信じらんない」

「それでもいいって言われたんだもん。正直、俺も欲のはけ口が欲しかったの」


あたしはため息をつきながらほとほと呆れた。


無自覚で人を振り回す人ほどめんどくさい人はいない。


「蒼ちゃん、ほんと罪な男だね」

「でも俺、他の女の子に期待持たせたりした覚えないよ。理央にも最初にちゃんとともが好きって言ったし」

「そんなことしなくたって、蒼ちゃんは立ってるだけで女が寄ってくるの。渡辺さんがいい例でしょ」

「誰? 渡辺さんて」

「え、告白されたんでしょ?」

「んー、名前知らない人から告られることもあったからねえ。その人かなー?」

「…………」


おいおい、どんだけモテるんだよこの男は。


< 179 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop