あたしの心、人混みに塗れて
「そもそも、ともは好きで栗山君と付き合ってるんでしょ? だったら、栗山くんを受け入れたいって思わないの?」

「思うけど……あたしにはまだ早いって思ってるし。キスだって、いまだに慣れないのに」

「まだ早いって、あなた半年も男と付き合って何言ってんの」


蒼ちゃんは苦笑していた。


あたしがおかしいのかな。


うん、まあ、あたしがおかしいことはわかっている。


彼氏がいる友達は、既に初めては済ませたとちらほら聞いているし、半年も経ってキスしかしていないなんて、あたし達以外に聞いたこともない。世間一般的には、既に彼氏を受け入れて当然の期間に入っているのだ。


高校生ならまだしも大学生にもなって、どこの純情ぶる女だと自分で突っ込みたくなる。


なる、けど。


「なんでこんなに嫌なんだろう……」


目を伏せてため息をついてしまう。


自分でもわからない。


一応、昌人と付き合っている自覚はある。世のカップルは、体の繋がりもあることも知っている。


でも、なぜか、自分が世の中のカップルと同じことをするとはいまだに思えないのだ。付き合って半年も経っているというのに。


おかしいことはわかっている。


あたしはどうすればいいのだろう。


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