あたしの心、人混みに塗れて
「蒼ちゃん」

「んー?」

「どこか、行きたいとことかある?」

「え、それってデートのお誘い?」

「どうだろ」

「別に、どこも。ここ、田舎だしあんまり娯楽施設ないしねー」

「そういえばそうだね」

「地元に戻れば思いついたかも。映画とか、スイーツバイキングとか、あっちの方が都会だしねー」

「バイキングなら行きたいなー」

「じゃ、今度帰ったら一緒に行こっか」

「うん」


平和だ。穏やかで静かな休日。


「蒼ちゃんってデートしたことある?」

「んー、2、3回かな。理央がどうしてもっていうから一回だけ付き合ったのと、告白された子に最後の思い出とかなんとか説得されて二回くらい」

「はあ」

「ともは栗山くんとほぼ毎日行ってたもんね」

「んー、最初はどこに行こうかっていろいろ考えて楽しかったけど、そういうのが重いって言われてから、考えが変わったかも。そんなことを思われたらこっちがいくら考えたって無駄じゃん。正直めんどくさいなって思うようになっちゃった」

「じゃあ、俺は?」


蒼ちゃんは寝転びながら、壁に背をつけて座っているあたしを見上げていた。


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