あたしの心、人混みに塗れて
「ね、ともぉ」

「何?」


あたしを抱きしめたまま、蒼ちゃんがあたしに頬擦りしてきた。


「何も言わずに俺の前からいなくならないでね」

「夢のこと、気にしてんの?」

「俺、夢は神様が未来を見せてくれてると思ってるから」

「……小学生か」

「まあ、ともが俺に言ったところで離す気はないけどねー」

「……そうですか」


あたしだって、蒼ちゃんの前からいなくなる気なんてないよ。


20年間一緒にいて、今更蒼ちゃんがいない生活なんて考えられないのだから。


そう口にする代わりに、あたしは蒼ちゃんの背中に手を回して抱きしめた。


たまにはあたしが甘えたっていいだろう。


「…………んぅ」


すると、蒼ちゃんが低く呻いた。



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