あたしの心、人混みに塗れて
「ともに教えてあげる」


蒼ちゃんがあたしのブラウスのボタンに手をかけた。


心臓がいつもより早い鼓動を刻んでいるのは酔いのせいだけではない。


自分の身の危険を頭で理解した。


「その気になれば、ともなんかこの場で犯せるんだよ」


蒼ちゃんが再びあたしの口を塞いだ。今度は一気にあたしの咥内に舌を入れてきた。


あたしの咥内を蒼ちゃんの舌が犯していく。ブラウスのボタンが外されていくのを感じた。


抗おうと体をよじるけど、二本の足の間に蒼ちゃんの足が絡まって動けない。蒼ちゃんの足の温もりを不覚にも気持ちいいと感じていた。


蒼ちゃんの手が素肌に触れる。あたしはくぐもった声を上げていた。


不意に腕を掴まれた。あたしは全力でその手を振り払った。


「嫌!!」


次の瞬間、体にかかっていた重みと温もりが引いていった。同時に体の中の熱もするすると引いていく。


気付けばあたしの体は震えていた。


怖くてしばらく目を閉じたまま動けなかった。でも、どれだけじっとしていても何も起こらなかった。


ドアが閉まったような音がしたからそっと目を開けてみると、部屋に蒼ちゃんの姿はなかった。ブラウスのボタンを中途半端に外されて乱れた格好のあたしだけが残っていた。


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