あたしの心、人混みに塗れて
「……穴」

「え?」

「ピアスの穴、塞がってたから……」

「ああ、気付いた?」


蒼ちゃんの言い方だと、わざと塞いだようだ。


不意に蒼ちゃんの手があたしの腕を掴んで引き寄せた。


あたしはわけがわからないうちに蒼ちゃんのベッドに横になっていた。あたしの両腕をベッドに押し付けてその上に蒼ちゃんが跨がる。


昨日と同じ状況だ。


そう思ったら、体がベッドに貼り付いたように動けなくなった。


そんなあたしを蒼ちゃんが見下ろす。いつもニコニコしている蒼ちゃんの面影はどこにもない。


肩にかかる髪を払われて蒼ちゃんが顔を埋めた。唇と柔らかい茶髪が首筋に当たってくすぐったい。


「蒼ちゃ…………!?」


蒼ちゃんの唇が強く吸い付いた。ちう、と音を立てて、あたしの体はびくりと震えた。


蒼ちゃんの顔が離れて、吸い付いたところを指でそっとなぞった。


「……俺のもんって、自覚しな」


そう言った蒼ちゃんは顔を歪めてあたしの体に手を回した。覆い被さるように抱きしめられる。


「……ごめん」


あたしがぽつりと呟くと、蒼ちゃんが唸った。


「俺……大人気ない」

「蒼ちゃんを大人だと思ったことないけど」

「ん……嫉妬しました。ごめんなさい」


しゅんとうなだれる蒼ちゃんが可愛くてあたしは思わず笑ってしまった。


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