あたしの心、人混みに塗れて
「俺の傍にいてよ……」

「んー、できる限りね」

「とものばかあ」


あたしを抱きしめたまま横になって、蒼ちゃんはあたしの顔を覗き込んだ。


「可愛過ぎんだよ、とも」

「……蒼ちゃんに言われたくない」


あなた、言っとくけど、女のあたしより可愛いからね。女装したらあたしより可愛くなる自信すごくあるよ(自信と呼べるものかはわからないけど)。


「たまに化粧するとすごい可愛くなるの反則……」

「はあ、そりゃあありがとうございます」


蒼ちゃんはあまりよく思っていないけど、それすごい褒め言葉だよ。


「まじであの時玄関で襲おうかと思ったあ」

「……そりゃあ、お控え願いたい」

「我慢したよ。褒めてよ」

「いや、帰った後襲われたからね」

「だってほんとに腹立ったんだもん」

「可愛く言っても褒めません」

「とものけちぃ」


蒼ちゃんも案外独占欲が強い。


お互いを自分のものだと強く思っている。


なんだかおかしくなって二人で笑い合った。


「俺、そのうちとものこと監禁するかも」

「捕まるからやめて」

「ともと一緒だったら鉄格子の中でも喜んで入るよ」

「そしたらあたしが監禁してあげる」

「とも、変態ー」


ふふっと笑った蒼ちゃんはあたしの唇にゆっくり口づけた。仲直りのキスは温かかった。


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