あたしの心、人混みに塗れて
「外したけど」

「うん」


あたしはじっと蒼ちゃんのピアスホールを見つめていた。ピアスをつけているときより格段に色っぽい。ピアスホール一つでこんなに変わるのか。


蒼ちゃんの耳にキスしたい。唇で触れて、舌でなぞりたい。そんな衝動をあたしは必死に抑えた。


ああ、やっぱりあたしは変態かも。


「とーも」


飽きることなく蒼ちゃんの耳を見つめていたら、不意に蒼ちゃんがあたしの顔を覗き込んだ。


「ともって耳フェチなの?」


蒼ちゃんがいきなり当ててきたから、あたしはうっと詰まってしまった。


「耳もいいけど、俺も見てよお」


蒼ちゃんがあたしの背後に回って後ろから抱きしめてきた。足を立ててその間にあたしを入れる。


あ、残念。耳が見えない。


「俺、自分の耳に嫉妬するのやだよ」

「しないでよ。自分の一部でしょ」

「そうだけどさあー」


ゆらゆらと左右に揺れる蒼ちゃんに体を預けて一緒になって揺れているとだんだん眠気に襲われてくる。


──ねえ、いつになったら襲ってくるの?


あたしはその言葉を喉の奥に留まらせた。


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