あたしの心、人混みに塗れて

それから二日後、ようやく生理が終わった。


風呂に入って鏡に全身を写す。蒼ちゃんが家でしているから一緒になってたまにやっている筋トレは意外にも効果を発揮しているようだ。一昨日ケーキをあんなに食べたのに腹はそこまで出ていない。他の部位も細すぎるとは言えないけど、見苦しいとまでは太くない。


これで顔と胸がよかったらなあ。


思わず顔を歪めてしまう。なんであたしの胸はここまで小さいのか。確かこの間見た鳴海さんは、身長の割に胸は突き出すほど大きかった。Ｄカップくらいはあったはず。おまけに顔もいいとか、どんだけいいものを持っているんだ。


世の中不公平だと思う。あの胸を10分の1でもいいから分けてもらいたい。


まあ、今更自分の体を嘆いていても仕方ないか。20年間この体でやってきたのだから、これからもこの体と付き合っていくしかないのだ。


シャワーを浴びて全身を丹念に洗って湯船に浸かる。この時期は特に冷えるからじっくり温まる。


そういえば蒼ちゃんに一緒にお風呂入ろうなんて一度も言われたことないなあ。まあ、初めてもまだなのに、いきなりお風呂ってのもおかしいか。


この風呂だったら狭いから向かい合っても二人の体はきっと密着してしまうだろう。お互いの体を見せびらかすようなものだ。うん、ここでは絶対一緒に入りたくないや。


この一週間、蒼ちゃんは本当に一切あたしに触ってこなかった。一回くらい触ってもよかったのに。怒らなかったのにと思うほど、蒼ちゃんはあたしに近づかなかった。


……あたし、そんなに魅力がないのかあ。


はあ、とため息が漏れる。わかっていたけど、やっぱり落ち込む。自分で自分の首を絞めては世話ない。


いっそのことあたしが襲っちゃえばいいのかな。どうすればいいのかはよくわからないけど、押し倒してしまえばあとはなんとかなるだろう。その作戦でいこうかな。


押してだめなら引いてみろ。あ、この場合は引いてだめなら押してみろか。


別に引いていたつもりもないけど。でも、このままだと本当に何もせずに一年を迎えそうだ。あたしは早く蒼ちゃんに触れたいのに。


ああ、いつからあたしはこんなに変態になったんだ。最近こういうことばっかり考えて、もう情けない。