あたしの心、人混みに塗れて
昌人の唇があたしの唇を包み込むように重なる。ほどなく離れて、また重なった。


あたし達が今までしてきたキスとは全然違った。


触れるだけのキスから、お互いを確かめるようなキスになっていた。


昌人の舌があたしの唇をなぞった瞬間、あたしの肩がぴくりと震えた。


あたしの唇を丹念に舐め尽くして、昌人の舌があたしの咥内に入ってきた。


昌人の舌が咥内を動き回る。


何、これ。


なんだか変な感覚に襲われた。


言葉では言い表せない感覚。


そして、その感覚は二人の舌が絡み合った瞬間に理解した。


「ん、ぅ…………」


体の力が抜けていくのがわかった。


何これ……。


なんだかふわふわしている。


目を閉じていると余計にその感覚に襲われてしまいそうだ。


これが気持ちいいっていうやつなのかな。


「智子……」


昌人が一瞬唇を離して呟いた。


そして、肩を押されて体が床に倒れた。


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