あたしの心、人混みに塗れて
蒼ちゃんが顔を上げてあたしをじっと見つめる。その熱っぽい瞳に、あたしの体も内側から熱くなっていく。


「ともが欲しい」


まっすぐ言われるとやっぱり恥ずかしい。


「……ストレート過ぎる」

「じゃあ、言い方変える。ともを抱きたい」

「……変わってないけど」

「うるさい。俺がどんだけ我慢したと思ってんの」

「……こっちの台詞だから」

「え、とも欲求不満だったの?」

「だって、何も言ってこないから、あたしとはやりたくないのかなって」

「俺が襲ってもそんなこと思ってたの? やっぱ確信犯? それともただのばか?」

「……彼女を悪く言いすぎでしょ」

「普通襲われたらわかるでしょ。それでも最後まではしないって決めてたのにさ、ともが初めてだから」

「それっていつまでもやらないってことじゃないの?」

「ともがいいって言ったらやろうって思ってたから。でも、ともが欲求不満だったら我慢する必要なかったね」


蒼ちゃんがくすっと笑って体を起こした。あたしの体を持ち上げてそっとベッドに横にする。


「とも、重い」

「……彼女に言うことじゃないでしょ」

「冗談冗談。ともってほんとからかうと面白いねえ」


蒼ちゃんがあたしの髪の毛を撫でて「思ってたより軽かったからびっくりしたの」と、宥めるように額に唇を落とした。


……どこまで本気なんだろうか。


「俺、もう我慢しないからね」


そして、ゆっくりと二人の唇が重なった。


自然に下りた瞼と、蒼ちゃんの頬に触れた指。それが全てを同意した証だ。


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