あたしの心、人混みに塗れて
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「そうか、ともにはまだまだ早かったか……」


蒼ちゃんがそう呟いて、あたしの背中に回している手で頭をぽんぽんと叩いた。


「怖いぃぃぃ……もうやだぁ……」


あたしは蒼ちゃんの腕の中でぐずぐず泣いた。


あたしは、やっぱりダメだった。


ディープまではまだよかった。昌人の舌が入ってきて、変な感じはあったけどふわふわした気持ちになって、悪くないかもと思った。


でも、そのまま押し倒されたのはかなりの予想外だった。


背中に固い床の感触を感じたあたしが、ん? と思って目を開けると、見たこともない昌人があたしを見下ろしていた。


見たこともない、というのはおかしい表現だけど、それ以外に表現のしようがない。


目をギラギラさせて、言うなれば『男』の顔した昌人がそこにいた。


その顔に怯えたあたしは、噛み付くように唇を奪われ、舌を絡ませながら胸を触られた。


初めて他人に体を触られて、びくりと体を震わせたけど昌人はその手を動かして、あたしはその刺激に背中がぞくぞくと震えた。


唇から離れた昌人は今度は首筋に吸い付き、ちくりと痛みが走った瞬間、あたしは昌人の体を突き飛ばしていた。


突然離された昌人は呆然とあたしを見つめて、その瞳から逃げるように、あたしはそそくさと昌人の家から逃げてきた。


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