あたしの心、人混みに塗れて
あたしは決して抱かれたいから蒼ちゃんに近づいているわけじゃない。


ただ、蒼ちゃんが心配なのだ。


あたしが近づいたらそうなるとわかっていて、それが決してあたしがそれに気乗りしなくとも、あたしは蒼ちゃんが心配だった。


今まで喧嘩しなかった人が喧嘩をしたら、精神状態はどうなるのだろう。


これはあたしの勝手な憶測だけど、かなり精神的苦痛ではないか。特に、基本争いごとを嫌う優しい蒼ちゃんならば。


壊れてもおかしくないのは、蒼ちゃんの方だ。


そんな蒼ちゃんが抱える苦痛が少しでも和らぐのなら、あたしはこの身を差し出しても構わなかった。蒼ちゃんが苦痛から逃れるならば、なんでもいい。


蒼ちゃんが苦痛を抱えていることは見ればわかった。喧嘩をしたと言って帰ってくる度に蒼ちゃんはわずかに顔を歪めていた。笑っていても、その痕跡はあたしにはわかった。


生まれてからずっと一緒だからわかったのだと信じたい。


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