あたしの心、人混みに塗れて
間近で見ると、鳴海さんは本当に可愛かった。


整った女の子らしい顔立ちだ。大きくぱっちりした目に、控えめな鼻、ピンク色に染められた唇、白い肌。女の子なら誰もが羨むものを目の前の女の子は全て持っているようだった。


そして小さく細い体。なのに胸はあたしの何倍あるんだろうと思わず考えてしまったくらい大きかった。おまけに声も高くて可愛い。なのに、ぶりっ子している感じは一切感じさせない。


あたしと真逆の位置にいるにも程がある。なぜあたしの周りにはこうも顔が整っている人が多いのだろう。生まれつき素材が良くないあたしへの当てつけだろうか。


蒼ちゃんを夢中にさせたのも納得がいく。理屈抜きで納得する。というより、なぜあたしを選んだのだと聞きたい。


思わず逃げ出したくなった。こんなに自分を惨めに思ったことは20年の人生の中で初めてかもしれない。


と一瞬のうちにいろいろ思ったけど、あたしはこの日の授業は既に終わっていたし、正直この時暇を持て余していたから、思わずいいですよと頷いていた。


鳴海さんがほっと安心したように笑っていたのを見て、あたしはなぜだかいたたまれなくなった。


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