あたしの心、人混みに塗れて
あたしはこの時大学構内のコンビニの傍にあるベンチに座っていた。鳴海さんはあたしと少し距離を取って隣に座った。


「初めて、ですよね。相模さんとこうして面と向かって話すの」

「そう、ですね」


蒼ちゃんと関わっていた人という設定を抜きにしても、こんな美人と話すこと自体に緊張して声がうまく出ない。


「蒼大とは同じ学科でよく授業も一緒なんです。それで仲良くなって」

「へえ……」


『蒼大』…………ね。


そういう仲だとはわかっていたけど、やはり喉の奥が詰まったように苦しくなる。


「私といても、蒼大はあなたのことばかり話すんですよ。だから、蒼大の言う『とも』ってどんな人なのかなっていつも思ってて」

「そう…………ですか」


言いようのない恐怖に駆られる。それが何かはわからない。今鳴海さんはただあたしに向かって話しているだけだ。


なのに、怖いのだ。そのうち切り出される何かに。


「蒼大に『とも』ってどんな人なのか聞いてみたことがあるんです。そしたら、『俺とは真逆』って言ってました」

「真逆…………」


確かにその通りだ。でも、そうはっきり認識していたのはあたしだけだとずっと思っていた。特にあたしは、蒼ちゃんに対して劣等感に似たようなものも抱いていたから。


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