あたしの心、人混みに塗れて
「あたしは蒼ちゃんが思うほど鈍くないし、弱くもない。でも、今まで真実に目をつぶってきたのは事実。あたしを騙せると思ったの?」

『だって、ともが知ったらまた悲しませる』

「当たり前でしょ! 好きな人、それも彼氏が他の女をいまだにそういう関係を続けてるなんて知って誰が喜ぶのよ!」


形勢逆転。あたし達は昔から喧嘩をするとこうなる。


「……あたし、何か間違ってること言ってる?」

『言ってない。ともは正しい』


蒼ちゃんの声の勢いが萎んでいくのを感じた。蒼ちゃんを追い詰めたいわけじゃないけど、当然だと思った。


「性格は、そう簡単に変わらない」


あたしと付き合う前からセフレを作っていたくらいだ。浮気をするだろうという疑念くらい、あたしも持つべきだった。


涙が一筋零れる。どうしていつもこうなるのだろう。あたしと蒼ちゃんは、ただの幼なじみであって、決して運命の人ではない。いや、ある意味運命で結ばれているのかもしれない。


あたし達は決して結ばれない運命。


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