あたしの心、人混みに塗れて
─────


「ねーねー。ねーねー」


あたしが歩く度に奏也は着いてきた。一歳半の子供はお母さんのあとをついてくることもよくあるそうだ。あたしをちゃんと家族として認めてくれているようだ。


「なーにー。ねえねは食器を洗いに行くからちょっと待ってねー」


あたしは台所に行って流しに置いてある家族分の食器を洗い始めた。


奏也はあたしの足にぴとりとくっついてきた。


「どしたのー、そーく…………って、涎まみれにしないでー!!」


あたしが履いていたスウェットを奏也の涎でベタベタにされてしまった。


「ただいまー」


ちょうどいいタイミングで母さんが帰ってきた。


「母さんっ、そーくんがあたしのスウェットベタベタにしたー!」

「あーあ、奏也、めっ」


母さんが奏也をあたしから剥がした。奏也は後ろでバタバタしていたけど、あたしは食器を片付けることに集中した。


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