あたしの心、人混みに塗れて
「わかった。シュークリームとレモンパイね」


そう言って、蒼ちゃんが立ち上がってあたしに顔を近付けた。


次の瞬間、唇の端をざらついた熱いものが滑るのを感じた。


「ごちそうさま」


にっこりと笑って蒼ちゃんが自分の唇を舐めた。


「……クリームついてた?」

「うん。とも、大学生にもなって子供みたい」

「言ってよ……」


舐められるとなんだか余計恥ずかしいじゃないか。


「お風呂、先入るよ」


あたしの頭に手を置いてから蒼ちゃんは部屋に入っていった。


全く、こういうところも昔から変わらない。


回し飲み、食べ回しはしょっちゅうだし、スキンシップも当たり前。抱き着くのと、今のように舐めてくるのはさすがに今となっては蒼ちゃんからだけだけど、それでもあたし達の間では当たり前のことだ。


ただ、ほんの少しだけ意識してしまった今となっては、ちょっとドキドキする。


今も蒼ちゃんの舌の感触が残っていて、思い出すと頬が熱くなる。


ほんと、天然でやってくるから困ったものだ。


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