あたしの心、人混みに塗れて
次の日、あたしは経済棟で蒼ちゃんと偶然出くわした。


朝と晩はいつも一緒にいるけど、昼間に会うことは珍しい。


「あ、ともだあー」


蒼ちゃんはあたしを見つけるなり満面の笑みで手を振ってきた。


「蒼ちゃん、どうしたの?」

「経済の教授にちょっと用事があってね」

「理学部なのに?」

「俺、割と経済の分野にも興味あるんだよー」

「終わったの?」

「うん。ちょうど帰るとこー。ともは?」

「あたしも今終わった」


じゃあ、と蒼ちゃんが口を開いたとき、傍の教室から声が漏れた。


「昌人、今の彼女とどうなのよ?」

「んー? 順調順調。俺ら超仲いいし」

「前の彼女だいぶガード固かったからな。お前、だいぶ溜まってて今の彼女に無理させたんじゃねーの?」

「あはは。確かに、智子のガードの固さには参ったわー」


あたしは蒼ちゃんと顔を見合わせた。


二人の男の声だった。しかも、一人はあたしが聞き慣れた声。


元彼の昌人だった。


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