あたしの心、人混みに塗れて
「智子、それは惚気って言うのよ」


隣であたしの頬をつついたのは、この地で一番最初にできた女友達であり、あたしの親友。


「……違うと思うけど」

「いやあ、それは惚気だわ。その年で男と同棲してるだけでも惚気だってのに」

「同居だけどね」

「意味は一緒よ」


千晶がため息をついて、購買で買ったカルボナーラをフォークに巻き付けた。


高橋千晶(たかはしちあき)は、あたしが理学部で一番のイケメンである蒼ちゃんと同居していることを知っているし、あたし達がハグやちゅーみたいなスキンシップをすることも知っている。


そこに恋愛感情という厄介なものはないということも。


昼は大学で済ませようと購買でパンとカップ麺を買っていたら、そこで普段は学部が違うから別行動の千晶と出くわして、そのまま一緒にお昼を食べていた。


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