あたしの心、人混みに塗れて
「でもいいなあ。川島くんっていったら、うちの教育学部でもけっこう騒がれてるのよ。ほら、理学部と校舎が隣だからさ、理学部と横飲みもよくやってるし」

「千晶も行ってんの?」

「私はたまにね。週末の度に参加するほど教育学部の奴らと仲良くないし」

「んなこと言って、友達はちゃんといるじゃん」

「上辺ばっかの大人ぶってる奴らよ。声かけられるから仕方なく付き合ってるだけで、本当だったら一人でいたって平気」


あたしと千晶は考えが似ている。


少人数と深く親しくなるタイプであるあたし達は、大学という自由過ぎる場は合わない。自由というものは、人間関係すらも左右して、あたし達の周りには上辺ばかりの薄っぺらい友情で繋がっている人達だ。それをわかってはいても、人は一人になることを恐れてその生温い関係から離れたくないのだ。


あたしはそんなものはいらない。友達がいない現状に満足しているわけでもないけど、そんなものに身を預けるくらいなら友達なんかいらない。


そう考えるのは千晶も一緒だった。


「まあ、でも、川島くんはそんな中でもイケメンよね。私も実際絡んでみて、本当に優しい子だなって思ったし」


千晶は飲み会で一回蒼ちゃんと絡んだことがあるらしく、それ以来蒼ちゃんをいい人だと褒めているのだ。


< 69 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop