あたしの心、人混みに塗れて
「なにー?」
ニコニコ笑いながらご飯を頬張る蒼ちゃんは、悪いことなど何もしていないと言いたげにこちらを見ていた。
まあ、確かに悪いことはしてないけどさ。
「気になるんだけど」
「いや、いつ見ても、ともの支度は早いなって。他の女の子の倍は早いんじゃない?」
「そうなの? 比べたことないから知らないけど」
「化粧はー?」
「ご飯の後」
あたしは蒼ちゃんの向かい側の席に座って、箸を持って手を合わせた。
だってさ、化粧したのにご飯粒とかついてたら嫌じゃん。女としてどーよって突っ込みたくなるよ。
朝は寝ぼけているから、けっこうそういうことあるし。
今日の朝食は、ご飯に味噌汁、ハムエッグにミニトマト。あたしは味噌汁を一口飲んだ。
「うん。蒼ちゃんの作る味噌汁はいつもおいしいね」
今日は里芋とにんじんと鶏肉入りだ。
「味噌汁なんて、誰が作っても同じでしょー」
蒼ちゃんがふふっと笑った。
「違うよ。人によって全然味が違ってくるもん。蒼ちゃんは薄味で素材の味を生かしてるよね」
「ともは毎回濃いもんねー」
「それ、違うってことだよね」
「あ、ばれた」とペロッと舌を出してはにかむ目の前の男を、あたしは一度も恨むことができないでいる。
たぶん、これからも思えないだろう。
実年齢より遥かに幼く見える、二重のくりっとした目に、よく笑う下唇が厚い口、丸い鼻。
165センチあるあたしと同じくらいの身長で、男子の中では明らかに小さくて、明るい茶髪に染めている彼は、明らかに可愛い系に分類される。
右耳に3つ、左耳に4つも開いているピアスだけが、彼をなんとなく歳相応に仕立て上げている。傍から見たらチャラいともとれるかもしれない。
今日も耳元を飾る7つのピアスが朝日に照らされて光っていた。
ニコニコ笑いながらご飯を頬張る蒼ちゃんは、悪いことなど何もしていないと言いたげにこちらを見ていた。
まあ、確かに悪いことはしてないけどさ。
「気になるんだけど」
「いや、いつ見ても、ともの支度は早いなって。他の女の子の倍は早いんじゃない?」
「そうなの? 比べたことないから知らないけど」
「化粧はー?」
「ご飯の後」
あたしは蒼ちゃんの向かい側の席に座って、箸を持って手を合わせた。
だってさ、化粧したのにご飯粒とかついてたら嫌じゃん。女としてどーよって突っ込みたくなるよ。
朝は寝ぼけているから、けっこうそういうことあるし。
今日の朝食は、ご飯に味噌汁、ハムエッグにミニトマト。あたしは味噌汁を一口飲んだ。
「うん。蒼ちゃんの作る味噌汁はいつもおいしいね」
今日は里芋とにんじんと鶏肉入りだ。
「味噌汁なんて、誰が作っても同じでしょー」
蒼ちゃんがふふっと笑った。
「違うよ。人によって全然味が違ってくるもん。蒼ちゃんは薄味で素材の味を生かしてるよね」
「ともは毎回濃いもんねー」
「それ、違うってことだよね」
「あ、ばれた」とペロッと舌を出してはにかむ目の前の男を、あたしは一度も恨むことができないでいる。
たぶん、これからも思えないだろう。
実年齢より遥かに幼く見える、二重のくりっとした目に、よく笑う下唇が厚い口、丸い鼻。
165センチあるあたしと同じくらいの身長で、男子の中では明らかに小さくて、明るい茶髪に染めている彼は、明らかに可愛い系に分類される。
右耳に3つ、左耳に4つも開いているピアスだけが、彼をなんとなく歳相応に仕立て上げている。傍から見たらチャラいともとれるかもしれない。
今日も耳元を飾る7つのピアスが朝日に照らされて光っていた。