あたしの心、人混みに塗れて
「それって、ちゅーしたら舌も入ってきたの? 自分の舌と絡まったりは?」

「し、してないです……」


周りの視線が気になって、思わずキョロキョロと周りを見てみるけど、あたし達のことを気にしている人はいなさそうだ。


それより、こんな昼間から過激な話をしているのにカルボナーラを平気で食べている千晶が少し羨ましい。


「それはまだただのキスでしょ。絡まったらディープに入るんじゃない?」

「そ、そうですか…………」

「ふうん。川島くんにやられたんだ」


にやりと千晶が笑った。


やっぱり誰のことか言わず語らずともわかってしまったらしい。


「いや、でも、それもただのスキンシップみたいなもん…………」


実際は口移しされたんですけど。スキンシップなんて軽く言えるような代物ではなかったですけど。


「川島くん、欲求不満なのかもねえ」


うーんと唸って腕を組んだ千晶の言葉は聞かなかったことにしておこう。


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