あたしの心、人混みに塗れて
絶対来たくなかったんだ、飲み会には。


どうしても蒼ちゃんに弱い自分が憎い。


こうなることはわかっていたのに。


「あーあ…………」


あたしはテーブルの隅っこでため息をついて烏龍茶を飲み干した。


「すみません。次カルピスサワーお願いします」


傍にいた店員さんに空のグラスを渡して注文した。


あたしの席が廊下に一番近かったのが唯一の救いだった。飲み物がなくなれば、手持ちぶさたにならず飲み物を追加できるから。


今日は経済学部のあたしが所属するコースと理学部科学科の二年生同士の飲み会、つまり横飲みだった。


経済学部の女子が理学部を誘ったらしい。理由は聞かずともわかっている。みんな蒼ちゃん狙いだろう。


別に、あたしは来なくてもよかった。友達がいない飲み会ほどつまらないものはない。頼みの千晶は当然いないし、何より同じコースである昌人と極力顔を合わせたくなかった。


なのに、蒼ちゃんに誘われてしまったのだ。


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