あたしの心、人混みに塗れて
出来立ての軟骨揚げが運ばれてきたところで、テーブルに置いていたスマホが震えた。テーブルに置いていたせいで大きな音が出て、一瞬みんなの視線がこちらに向いたけど、あたしは気付かないふりをして、スマホを持ってゆっくりと立ち上がって部屋を出た。
できることなら誰にも気付かれずに席を立ちたかったのに。あたし一人がいなくなったって気に留める人はいない。千晶め、タイミングが悪いんだよ。
「はいはい」
トイレに入って、電話に出た。つまらないとメールを送ったら、電話すると返ってきたのだ。
『どう? そっちは』
「くっそつまんない。死にそう」
『川島くんは?』
「ビール、ジョッキで三杯連続でイッキして店員さんに怒られてた」
『でしょうね。しばらくはおとなしくしてんじゃない?』
「さあね」
『一人で飲んだ時の私の気持ち、わかったでしょ?』
「よーくわかりました。できることなら即帰りたい」
『そこ、たぶん途中退室できるわよ』
「え、そうなの?」
『私が行ったとこは2時間だけだったから無理だったけど、夜中までやってるんでしょ? みんな最後までいれる人ばかりじゃないでしょ。バイトとかでさ』
「確かに」
『智子が一人いなくなったところで誰も文句言わないでしょ』
「むしろ喜ばれるね」
『うちに来てもいいわよ』
「え、まじで?」
『あいにく飲み直すほどの酒は私が今飲んでるけど』
「あたし、そこまで酒好きじゃないよ。わかった、行くことになったらまた連絡する」
『ま、川島くんを介抱することになったら事後報告でいいわよ』
「や、たぶんそれは他の女の子になりそうだよ」
『智子、羨ましいでしょ?』
「……は?」
何言ってんの? と言おうとしたら、じゃーねーと一方的に通話を切られた。
できることなら誰にも気付かれずに席を立ちたかったのに。あたし一人がいなくなったって気に留める人はいない。千晶め、タイミングが悪いんだよ。
「はいはい」
トイレに入って、電話に出た。つまらないとメールを送ったら、電話すると返ってきたのだ。
『どう? そっちは』
「くっそつまんない。死にそう」
『川島くんは?』
「ビール、ジョッキで三杯連続でイッキして店員さんに怒られてた」
『でしょうね。しばらくはおとなしくしてんじゃない?』
「さあね」
『一人で飲んだ時の私の気持ち、わかったでしょ?』
「よーくわかりました。できることなら即帰りたい」
『そこ、たぶん途中退室できるわよ』
「え、そうなの?」
『私が行ったとこは2時間だけだったから無理だったけど、夜中までやってるんでしょ? みんな最後までいれる人ばかりじゃないでしょ。バイトとかでさ』
「確かに」
『智子が一人いなくなったところで誰も文句言わないでしょ』
「むしろ喜ばれるね」
『うちに来てもいいわよ』
「え、まじで?」
『あいにく飲み直すほどの酒は私が今飲んでるけど』
「あたし、そこまで酒好きじゃないよ。わかった、行くことになったらまた連絡する」
『ま、川島くんを介抱することになったら事後報告でいいわよ』
「や、たぶんそれは他の女の子になりそうだよ」
『智子、羨ましいでしょ?』
「……は?」
何言ってんの? と言おうとしたら、じゃーねーと一方的に通話を切られた。