Under The Darkness
「言うたやろ? 男なんてクズばっかりやて。あんな生き物好きになったらアカンで?」
栞ちゃんの口癖になっているセリフを、言い聞かせるように、確認するように、口にする。
小学生の頃から変わらない栞ちゃんのこの言葉。
男嫌いは私同様、昔から一貫して変わらないのが栞ちゃんだ。
私も栞ちゃんと同じだと大きく頷いた。
「恋愛な意味で男なんて好きになったことないよ、私」
あ、でも、恋愛ではないが、悠宇は特別だとこっそり思った。
口に出したら、栞ちゃんの機嫌が悪くなる。
栞ちゃんは、悠宇のことも男と認識してるから。
私は少し違っていて、悠宇と栞ちゃんは昔から家族みたいなものだって思ってる。だから、性別・男でも悠宇は怖くないし、そばにいても大丈夫なんだと思う。
その点は栞ちゃんと意見が合わないんだ。
「うふふ。それでええねん。美里はうちがもらうんやから」
栞ちゃん、満足げに目を細めるんだけど、なんだろ。いつにも増して、黒い気がする。纏う雰囲気が。
酔っ払ったのか、栞ちゃんがいきなり抱きついてきたものだから、二人してふわふわな毛足の絨毯に倒れ込んでしまう。
「栞ちゃんっ、なんか悪い顔なってるで!」
「美里、男になんか取られてたまるかー!」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて、そろそろ呼吸が危ない感じになってくる。
く、苦しい!息ができない!
栞ちゃんの腕の中でもがいていた時、突然扉が破られんばかりの勢いで開かれた。