Under The Darkness





 開け放たれた扉の前には、仁王像の如く怒りの形相をした京介君が立っていて。

 荒々しく靴音を響かせながら、大股で近寄ってくる。

 絨毯の上で、栞ちゃんにのし掛かられている私を見て、


「……油断も隙もない」


 舌打ち混じりに吐き捨てる。

 そして、のし掛かる栞ちゃんの首根っこを抓むと後ろの壁へとポイッと放り投げた。

 ガンッと音を立てて栞ちゃんの身体が背後の壁にぶち当たる。


「ああっ!? 栞ちゃんがっ」


 栞ちゃん! と駆け寄ろうとした私の腰にスッと腕が回る。私を拘束した京介君は、そのまま俵抱きに抱え上げてしまった。


「姉は連れて行く」


 栞ちゃんを一瞥し、京介君は踵を返すと、来たとき同様、足早に部屋を去ろうとする。


「待ちい! 美里どないする気ィや!!」


 打った腰を押さえながら、栞ちゃんは京介君に怒声を放つ。

 打ち所が悪かったのか、栞ちゃんはふらつきながら椅子を支えに立ち上がる。けれど、蹌踉めいてその場にまたしゃがみ込んでしまった。


「し、栞ちゃん!? 大丈夫!? 京介君っ! アンタ女の子になんてことすんねん!!」


 私の放った怒りの声を涼しい顔で無視した京介君は、侮蔑の混じる冷たい目を栞ちゃんへと向けていた。


「貴女と一緒だと、姉の身が危ないと判断しましたので、このまま連れて行きます」


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