Under The Darkness
「アンタ、この部屋にカメラ仕込んどんのか」
「まさか。貴女じゃあるまいし」
悔しげに歯噛みする栞ちゃんを、京介君、ハッと鼻で嘲笑った。
「アンタと一緒の方が危ないわっ! 美里、離しい!」
「貴女の親に連絡を入れました。もうすぐお兄さんが迎えに来るそうですよ」
そのセリフに、栞ちゃんの顔色が変わった。
栞ちゃんのお兄さんは妹を溺愛していて、外泊って言っただけで顔色変えてすっ飛んでくる。栞ちゃんが本気で嫌がるくらい、すごい過保護さんなんだ。
お兄さんに捕まったらしばらく身動きが取れないと判断したんだろう、栞ちゃん、テーブルに置いてあったスマホに手を伸ばした。
「チィッ、悠宇に、」
「彼は東京のスタジオに呼ばれて先ほど大阪を発ったそうです」
悠宇に電話しようとした栞ちゃんに、京介君が足を止めて、畳みかけるように言う。
栞ちゃんの顔が邪悪に歪んだ。
「なんでアンタがそんなこと知ってるんや」
「彼、有名人ですからね。情報など容易く入りますよ?」
「アンタ、なんかしたな?」
低い声で発せられる疑問の声を無視して、再び足を進め始めた京介君は、
「おやすみなさい」
ちらと栞ちゃんに視線を送り、扉を閉めた。
「美里! 首やで! 昔言うたやろ! なんかあったら首や!!」
閉まった扉から栞ちゃんの声が聞こえてきたが、
――それ、ここ来るときやられた。
京介君に荷物のように担がれながら、私はがっくりと頭を垂れた。