Under The Darkness
「っ!! お父さんって呼んでくれるの!? 美里ちゃん!!」
ガバッと抱きつかれて、身体がまたビクリと震えた。
冷たい恐怖がひたひたと心を蝕み出す。
「ああ、ゴメンね、あまりにも蘭ちゃんにそっくりだから、ついつい懐かしくて。もう怖いものはないからね。パパが美里ちゃんを守ってあげるから、」
私の手を取り家の中へと誘導しながら、だらしなく頬を緩めるお父さん。
この人にまで嫌な気持ちを抱いてしまう自分に、どうしようもなくイライラする。
その時、ニコニコなえびす顔をしたお父さんの言葉を、背後から近付いてきた影が遮った。
どすっと鈍い音がして、お父さんの巨躯《きょく》がグラリと傾ぐ。
「……父さん自らが美里さんを守る必要はないんですよ。私がいますから。父さんは美里さんの側に居すぎです。しかも、パパってガラじゃないでしょう。せいぜい、親父かおやっさん、まんま親分って強面なキャラのクセに。ホラ、さっさと仕事に戻ってください。……鬱陶しいクソが」
お父さんの背後から現れたのは、制服に身を包んだ京介くんだった。