Under The Darkness
「は?」
「あの栞と言う女はビアンです」
唐突に、京介君はそんなことを言う。
私、「あ?」と、真抜けた声が出てしまった。
「レズビアンと言えばわかりますか?」
「はあ!? んなわけあるかいな! 栞ちゃんは男嫌いなだけで普通の女の子やないの! アンタどこに目ぇつけてんの!?」
栞ちゃんは甘えただから、あんなボディタッチはしょっちゅうだ。
私の上に乗っかっていた栞ちゃんのことが、京介君の目には女性を好きな『同性愛者』のように映ってしまったのだろう。
私は京介君の勘違いを訂正してあげたんだけど。京介君は分かってないとでも言うように、ゆるりと頭を振った。
「貴女の男嫌いを増長させているのが、あの女だと言うことだけははっきりとわかりました」
「なんやの!? 話聞いとったん!? まさか、ほんまに盗聴!?」
栞ちゃんも言っていた。カメラでも仕込んでんのかって。
薄気味悪さに、スーッと血の気が下がってゆく。
「貴女はふしだらな愛人の子です。私が見張っていないと、誰に媚びを売り擦り寄るかわかったものじゃない。馬淵の名を汚すような真似をされたらこちらが迷惑だ」
その言葉に、下がった血が一気に上昇した。