Under The Darkness





「うそ、……ほ、んまに……?」


 ――する気なん?


 足を掴まれた拍子にガウンが左右にはだけ、太ももの際どい部分まで肌が露わになる。けれど、それを気に留めるだけの余裕が、私にはなかった。

 呆然と京介君を見上げ、慄える唇が頼りなげな言葉を紡ぐ。


「ふふっ。イイですね。その絶望と不安に苛まれる顔。もっと歪めてやりたくなる」


 狂気じみた目で私を捉えたまま、京介君は愉しげにくつくつ嗤う。

 京介君の唇がまたふくらはぎに触れ、朱い舌がぞろりと舐め上げる。驚愕に目を見開く私を、笑みを含んだ双眸でひたと見据えながら、京介君はいきなりそこに噛みついた。


「……痛っ!」


 柔らかな肉を喰いちぎらんばかりに咬みつかれて、生理的な涙が溢れ視界を歪ませる。痛みに足を引こうとするが、がっしりと掴まれて微塵も動かない。

 京介君の唇が離れると同時に、くっきりと刻まれた歯形から赤い滴が一筋したたり落ちた。

 それを舌先で舐め取る京介君の淫猥な仕草に、私、我慢が出来なくて。

 狂ったように暴れた。


「嫌や! なんでそんなんするん!? 結局京介君も一緒なん!? それを望むんやったら、結局アンタもアイツらと同じやないの! 痴漢どもや豪と一緒!」


 私の叫びに、京介君が忌々しげに顔を顰めた。


「私が愚かな男どもや、選択を誤った豪と同じ? 勘違いしてもらっては困る」


 嘲笑の中に、いつ爆発するか分からない危うい激情を感じて、全身から汗が噴き出してくる。


「あの男は貴女に心底惚れていた。けれど、私は違う」


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