Under The Darkness
最後、京介君なに言った? 小さくてよく聞こえなかったけど、お父さん凄く怖い顔で京介君のこと睨んでる。
京介君、学校から帰ってきた所なんだろう。制服姿、初めて見た。
クリーム色に近い白のブレザー姿をしていても、この京介君という人物は、1ヶ月違いの異母弟とはいえ同い年になんて絶対見えない。
――老け顔やねんな。
正直な意見を心の中で呟く。
口にしたら最後、眼鏡の奥の、あの尖ったナイフみたいな鋭い眸で瞬殺されそうだから怖くて言えない。
でも、もうそんな時間なのかと、時間の感覚が狂っていることを痛感しつつ、ふたりのやり取りを呆気に取られながら眺めていた。
「こンのドラ息子が――っ」
抉《えぐ》られた脇腹を抑えつつ、お父さんは私に対峙していたときとは打って変わった極道者な低い声で息子を威圧する。
対して、お父さんに睨まれてる京介君はというと、ケロリとした顔で清々しい優等生風な微笑を浮かべていて。
「ほら。美里さんが嫌がっています。その汚い手を離してください」
ぐいっと、私とお父さんの身体を引き剥がした京介君は、漫画に出てくるヒーローみたいに秀麗な顔をにこりと綻ばせたんだけど。
でも、京介君。
ちゃんと笑ってみえるんだけど、いつも目が笑ってないんだ。それが私の中の警戒心を強くする。
「体調はどうですか?」
優しい声で問われ、私は慌てて頷いた。
「う、うん、ありがとう。もう大分ええよ。それより、前も言ったんやけど……連絡取りたい人がおるん。あかんかな?」
「バイト先の知り合い、でしたっけ?」
スッと京介君の顔から、偽りの笑みが消えた。