Under The Darkness
「事務所の斉藤さんにな、どっか東京で部屋借りてもらえんかな? 来年の3月まででええねん。お願い!」
『お、おう、わかった。なに? いま走ってんの?』
「うん、逃走中やねん」
凶悪なケダモノの目の届かない場所まで逃げてやるんだ。
ここは地元、私のテリトリー。
土地勘のない京介君なんて絶対見つけることは出来ないと、私は余裕だった。
『あのヤクザ野郎からか!』
「正解っ」
『そのまま俺んち来い! 匿ったる!』
息巻く声に、私は肩からずり下がったカバンを抱え直して否を返した。
「あかんあかん。お父さん心配やから、京介君撒いていっぺんお父さんに会う。ほんで、京介君見つからんように東京住む」
まあ、ほんの数ヶ月だけだけど。
ハアハア息を切らしながら、もうそろそろ大丈夫かなと辺りを見渡しながら駆ける速度を落とした。