Under The Darkness
「ははっ、毛ぇ逆立てた猫みたいやのぉ。ウソついてもアカンで。ここらでは有名やん、お嬢さん。えらい美人さんやてな。せっかく息子があんたのこと守ってやってたのに、恩を仇で返すようなことしくさってからに」
――息子?
私は男の顔をマジマジと見つめた。
ハッとする。似てる、アイツに。
「やっと分かってくれた? わしはな、豪の父親、田口組の若頭やっとったんよ。もう潰れてもうたけどなあ」
――あの川口組の若ボンが余計な真似しくさったせいで。
深い憎しみの籠もる苦々しい口調で呟く。
「息子もなあ、アンタが消えてすぐおらんなってなあ。アンタを質に取ったら馬渕も黙ってへんやろ思てな。新大阪でアンタ見たて舎弟から連絡あったからここいら一帯張ってたんよ」
愕然とする。
豪の父親は、スマホで「女おったから車回せ」と加勢を呼ぶ。
――また繰り返されるのかと、ゾッとした。
「さあ、ええとこ行こか」
いいながら、豪の父親は私の腕を折らんばかりの強さで掴んだ。