Under The Darkness
「助けてって言ったら、助けてあげてもいいですよ」
腕組みをした尊大な態度で、気のない声で、そんな意地悪なことを言う。
何の冗談だと私は目を瞠った。
「お、お前っ! 馬淵の息子やな!?」
豪の父親が焦った声で京介君に問うんだけれど、京介君は全くの無視で、視線は私から離れない。
「どうします? 美里さん。そのまま連れ去られて薬漬けにされた挙げ句、泡に沈む《風俗嬢の意》か。それとも、私に助けを求めるか」
――悠宇でも他の誰でもない、私を呼べば。助けてやってもいい。
ニッと、妖艶に口角をつり上げて嗤う。
「なんじゃこら、無視してからに!」
京介君に無視されて、豪の父親が眦《まなじり》を吊り上げる。
「黙れ」
張り詰めた空気を切り裂く、低い恫喝の声。
凄まじい怒気を孕んだ視線に射貫かれて、豪の父親は言葉を失っていた。
私を拘束する男の腕が小さく戦慄く。