Under The Darkness





 京介君の視線が豪の父親から私に向いた。ふっと唇が弧を描く。

 私、またいらぬ反骨心がふつふつと沸いてきてしまって。

 このまま京介君の言う通り助けを求めるのは癪に障る。

 けれど、このまま連れ去れるわけには行かなくて。

 わずかな葛藤が、答えることを迷わせる。


「きゃっ」


 いきなり豪の父親が私のお腹を抱え上げた。
 足が宙に浮き、驚いて暴れまくった。


「豪を…・・・・息子をどこやったんやお前!」


 その言葉に、私は「え?」と私を抱える男を見上げた。


 豪、冗談じゃなく、ホントにいなくなったの?


 問いかけられた京介君に視線を向ける。

 京介君は曖昧な笑みを浮かべながら、


「――さあ?」


 そう言って、感情の見えない双眸でじっと私を見つめている。


 京介君、言ってた。

 もう二度と、私の目に豪を映すことはないと。

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