Under The Darkness





「美里さん。豪や私のことなどどうでもいいんですよ」


 淡々とした口調で、重要なのはそこではないと、京介君はゆるりと首を振る。

 私が今、一番心配しなければいけないのは。

 京介君は、豪の父親を暴行したときと同じ加虐の性《サガ》を宿した眸で、



「私から逃げ出しましたね? 一番してはいけないことを、貴女はしてしまった」



 口角がゆっくりと弓なりに吊り上がり、内に秘めた魔性が顔を覗かせる。




「せっかく優しくしてやっていたのに。……愚かなほどに――可愛い女」



 悲哀を滲ませながら、けれど、その顔に浮かぶものは、醜く美しい、




「もう、容赦はしない」





 ―――ケダモノだった。
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