Under The Darkness
「どうしました?上の空ですね」
唐突に問われ、ギクッとする。
「はっ!ち、ちゃうねん、あんな、あれはな、それやねん。窓から行く言うたらあれしかないやろ、あれやん、あれ! なんやったかな、ほら、買い物……そう! 買い物やねん!! 窓からのが商店街近いねん!」
「……は?」
「そう! 晩ご飯、なんにしよっかなって、京介君にお手製の料理ふるまったろーかなって。ほら、弟やし!!」
な! わかってくれた? と、言い訳にもならないしどろもどろな苦しい弁明しか思いつかなくて。
行く手を塞ぐ京介君の腕をそろりそろりとくぐりながら、脇へ逃げようと試みる。
「ふふっ」
「ふぎゃっ」
下をくぐる私の頭を、京介君の大きな掌がガシッと掴んだ。
そして、京介君は肩を震わせ嗤い出す。
「ねえ、美里さん。貴女、自分の危機的状況がわかってますか」
片手で頭を鷲掴みにされて持ち上げられ、強制的に京介君と目を合わされる。
同い年とは思えないほど狡獪《ろうかい》に輝く双眸が、怯える私の姿を克明に映し出していた。
「今、携帯で誰を呼びました?」