Under The Darkness



「ははっ。それはね、美里ちゃん。このバカ息子は、美里ちゃんの雑誌をことごとく集めまくってスクラップしたり、写真集発売前から出版社脅して先に入手していたからなんだよ」


 と、今まで無言で私達を見つめていたお父さんが横から口を挟んできた。

 その言葉に私は唖然、京介君は一気に殺気立った顔をお父さんに向けている。


「……父さん? 何を言ってるのかわかりませんね。事実をねつ造しないで下さい。貴方父親なら娘に注意したらどうです。そんないかがわしい仕事など辞めてしまえと」



「なに勝手言うてるん! 私、辞めへんで! 仕事せな家賃かて払われへんやないか!」


 それに、高校卒業までにどうしてもお金を貯めたいのだ。

 私には夢がある。

 ママも生前、頑張れって応援してくれてた夢。

 それを叶えるために、どうしても今バイトを辞めるわけにはいかなかった。


「は? 美里さん、貴女はここに住むのだと何度言ったら分かるのですか」


「私は大阪に帰る言うてんの。東京来たらまた遊びに来るから、な? 大阪帰らせて?」


 京介君の目が次第に剣呑な光りを帯びてくる。

 ここは怒ってばかりいたらダメだと察した私は、 お願いっ! と目の前で両手を合わせながら、京介君をちらりと盗み見てみる。

 彼を見た瞬間、私の身体がコチンと固まった。雪がちらつく外よりもずっと冷たい、全く感情の見えない冷淡な双眸が、私を居丈高に見下ろしていたから。

 温度を消した京介君の姿に、怖すぎて目を引き剥がすことが出来ない。


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