Under The Darkness




 追い立てられるような恐怖が背中から這い上がってくる。

 心臓が早鐘を打った。

 焦りながらも開錠し、扉を開けようとした時。


 背後から京介君に、ドアノブを掴む腕ごとまとめて抱き竦められてしまう。


「くぅ……っ」


 心臓が痛いくらいに胸を叩く。

 強く締め上げるようにして拘束される。

 そして、京介君の右手が私の首に回された。


「……あぁ!」


 親指で頚動脈を押さえつけられたのがわかって、パニックを起こしたみたいに思いきり藻掻いた。


「ふふっ。人形みたいに大人しい貴方も素敵ですが」


 必死で身を捩るが、背後から抱き竦められて動けない。

 片腕でぐいと身体を持ち上げられ、つま先立ちにされた私は、思わず京介君の腕に縋ってしまう。


「今のように全身で抵抗する貴方のほうが、ずっとそそられる……」


 情欲に擦れた低い声が、私の耳元を掠める。


「あか、んっ! したらあかんっ! アンタだけはダメなんや!」


 頚動脈を押さえ付けられ霞んでゆく意識の中、必死になって訴えた。

 この男に伝わることはないのだと、心のどこかで知りながら。

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