Under The Darkness





「聞き分けのない人だ」


 眉を顰めた京介君は、片手で私の両手首を掴み、易々と拘束してしまう。

 そして、京介君は自分の首元からネクタイをシュッと外して、私の両手首を頭上で一つに縛り上げた。


「こんなことしてなんになるんや! 私が気に入らんかったら、もう二度とお前の前には現れへんっ! それでええんちゃうん!?」


 私は必死で訴えた。

 これ以上、こんな意味のない背徳的な行為など、何も産み出さず何も得るものはない。

 だから――――。


「私に逢わなければすむと? 私の知らない所で、貴女が私以外の誰かと僅かでも同じ時間を共有しているなど、考えるだけで腹立たしい……」


 嫉妬の混じる表情で、言葉で、けれど、瞳に浮かぶものは激しい憎悪。

 私は余計に分からなくなる。

 京介君の心が望むものが何か、彼の心が平穏になるにはどうすればいいのか。

 わからなくて、混乱する。 


「京介君、おかしい。……なんでそんなこと言う? 愛してるみたいな言葉言うて、憎む目を向けてくるん? 私を、どうしたいんよ」


 私は、相手が本当に望むものが何なのかを汲み取れず、どうすれば京介君が無意味な行為を諦めてくれるのか、その糸口すら見つけることが出来ない。


 ――京介君は、本当はどないしたいんや?


「貴方にはわかりませんよ。分かって欲しいとも思わない。……貴方はただ、私の傍で」


 京介君は私に纏わり付くシャツの残骸もブラも手で引き裂いた。


「――やめっ」



「淫らに、恥辱と屈辱にまみれていればいい」


< 163 / 312 >

この作品をシェア

pagetop