Under The Darkness
「父さん、私はここで降ります。どうせ蘭奈さんを見に行くんでしょう? 帰りに迎えに来てください」
私はそう言うと扉を開けて、外へと出た。
「んー、わかった。とりあえずこのデジカメで美里ちゃん撮っててくれない?」
「了解です」
私はデジカメを受け取り車を降りると、正門前まで歩いていった。
生気のない萎《しお》れた花のような美里さんの姿を探すために。
今の時間帯は丁度下校時刻になるので、沢山の生徒たちが行き来していた。
女子達が私の脇を通り過ぎるたび、鬱陶しいほどの秋波を送ってくるが、これも珍しいことではないので無視。
声を掛けられても一切を無視し、そのまま校門の壁にもたれたまま、美里さんが出てくるのをひらすら待った。
姿を見るだけで、話すことなんて何もないんだけれど。
それでも、私の心はイライラするほどに浮き立った。
その時、一際美しい少女の姿が目に飛び込んできた。
俯き、暗い表情で、美しい金髪を焦げ茶色に染め、綺麗な萌葱色の瞳も髪と同色の色に変えた、偽りの姿。
大きく見開かれる彼女の眸には、はっきりとした怯えが見て取れた。
この時、美里さんはいつものように一人ではなかった。
辛気臭く陰鬱な雰囲気を纏った彼女が、大柄な男子生徒に腕を掴まれ、引き摺られるようにしてどこかへ連れて行かれる。その様に、目の前が赤く染まった。
「……美里さんっ」
変わらぬ彼女が見れた嬉しさよりも、美里さんの腕に気安く触れるあの男はなんだという猛烈な怒りに駆られながら、彼女の名前を叫んでしまう。
爆発しそうになる昏く危うい感情を無理やり抑え付け、私は美里さんの後を追ったのだ。