Under The Darkness
美里さんは一緒にいる大柄の男に、人気のない体育館裏へと連れてこられた。
私は男に対して、どうしてこんな所へ呼び出す必要があるのだと、憤りを感じると共にモヤモヤとした苛立ちに襲われる。
「俺、お前のことが好きや」
ギクリと肩が揺れた。
唐突に、その男は美里さんに告白をしたのだ。
彼が告げた言葉に、何故か心を掴まれてしまう。
――美里さんが、好き……?
すると美里さんは、凄まじいほどの恐怖が滲んだ瞳で男を見上げた。
「す、好き? いやや、わ、私は、好きやない。男なんか嫌いや……気持ち悪いっ……気持ち悪いねんっ、お前! ち、近寄らんといてッ、触るな! どっか行け!」
美里さんは驚愕に大きく瞳を見開き、甲高い声で男を全身で拒絶する。
それは愛しいという思いに対して、残酷なまでの拒絶だった。
美里さんの異常なまでの怯えと拒絶の言葉が、私の胸に深く突き刺さる。
私に放たれた言葉ではないのに。
きりきりと痛む胸を、私は掌できつく押さえつけた。
「――そんな言い方、酷いんちゃうんか」
男の顔が凶暴な色を刷く。
美里さんは遠目でも分かるほどにビクッと戦いた。
「藤沢、お前、今まで色んな男に言い寄られてきたやないか。男が嫌いとかよう言うたな。男はみんなお前のことええ言うんやで? なんでや思う?」
行き場のない怒りがいつ発火するかわからないといった危なげな雰囲気を、男は全身から漂わせている。
好きな女を怯えさせ追い詰めている、そんな嗜虐の悦びを顔にのせながら、男は言い放った。
「お前が周りの男狂わせとるんちゃうんか」
その言葉に、美里さんの細くて小さな身体がぎこちなく跳ね上がった。
「俺かてそうや。お前見てたら……たまらん気持ちになる。男をそんな気持ちにさせる何かがお前にあるからやろーが」
美里さんが反論しないのをいいことに、自分の欲望を彼女に転嫁したセリフを吐く自分勝手な男に、殺意を覚えた。
「お前、いっつも下向いて暗い顔して、誰が話しかけても相手にせんやろ? 小学校から仲ええはずの悠宇やら栞やらも無視しとるやないか。そんなお前見てたらほっとけんのや」
だから俺が守ってやるのだと言わんばかりに、男は自分勝手なヒーロー的妄想を美里さんに押し付けてくる。
そして、美里さんの腕を掴んで無理やり抱き寄せたのだ。