Under The Darkness
「な、何すんねんっ! やめえっ、離しぃ!! せ、先生呼ぶからな!」
「あほう、こんなとこ先生なんぞ来えへんわ」
男は構わず、下卑た笑みを浮かべたまま美里さんに顔を近づけた。
「なあ、藤沢。俺、めっちゃお前のこと好きなんや。好きで好きでたまらんねや。だから、……なあ」
「い、いややっ……やめ、やめてっ……」
男は覆いかぶさるようにして美里さんの顔に近づく。
キスをしようとしているのだと察して、顔からすとんと表情が抜け落ちた。
――ああ、死ねばいい。こんな男。
気配を消し、背後から男に忍び寄った私は、無言で拳を振り上げた。
その時、美里さんが急変したのだ。
「ああぁぁっ、助けてっ! ママ、ママ! いやああぁぁっ!!」
美里さんは狂ったように絶叫し、そのままずるずると頽《くずお》れてしまう。
「……お、おい? どないしたんや?」
焦った男は、美里さんを抱き起こそうとする。が、美里さんは目を見開いたまま痙攣発作を起こしたように全身を激しく震わせ、恐怖に染まった瞳は――もう何も映してはいなかった。