Under The Darkness

12







「……あぁ……」


 げっそりとやつれた声が出てしまう。

 窓を見ると、白んでいた空がすっかり傾いてしまい、遠くの山がオレンジ色に染まっていた。

 隣を見ると誰もいなくて。

 京介君が傍にいないことに安堵して、再びベッドへと顔を沈めた。



『遊んであげます』




 言葉通り、さんざん京介君に弄《もてあそ》ばれた私は、いつ気を失ったのかも分からないほどに疲弊しきっていた。

 そのまま泥のように眠ってしまって、気が付いたらもうすでに夕方近く。

 京介君が傍にいない。逃げ出すチャンスは今しかない。

 分かってはいるんだけど、身体が重くて怠くて、動くことすらままならない。

 まるで、身体に鉛を詰め込まれたようで。

 顔を動かすことすら億劫に感じられるほど、心身共に疲れ切っていた。


 一糸まとわぬ姿なのは相変わらずだったけれど、身体は全く汚れてはいなかった。



「……意識ない間に、また勝手にお風呂入れやがりました?」


 その証拠に、ご丁寧に胸の擦過傷にまで薬が塗り込んであった。

 好き勝手するくせに、なぜこんな所になど気を遣うのか。

 それこそ放っておけばいいだけの話なのに。

 訳がわからず首を捻る。

 優しいのか何なのか全く訳がわからない。

 けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。

 とにかく早く行動を起こさねばと、私は力の入らない身体に活を入れる。

 なんとかヨロヨロと、まるで産まれたてのバンビ状態で立ち上がった私は、黒のシーツを身体に巻きつけたまま、扉を開けた。

 長い回廊には誰もいない。安堵に胸をなで下ろす。

 京介君の隣の部屋が私に与えられた部屋なので、そこまでなんとか壁伝いによろよろと歩く。

 ずるずるとシーツを引き摺り身体に凝《こご》る鈍痛を誤魔化しながら、私は倒れ込むようにして部屋へと戻った。
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