Under The Darkness
よろよろと覚束ない足取りで、ママを探しながらあてもなく廊下を歩いていた時、もの凄い極道面なお兄さんが私を呼び止めた。
「お嬢さん、どこ行かれるんで?」
そのまま会釈だけして通り過ぎようと思ってたんだけど、いきなり声を掛けられてびっくりした。
「え? あ、ママの遺影がなくて、探しに」
「遺影? それはワタシが探しますんで。とにかく、部屋からは出さないようぼっちゃんにきつく言われてるんで、部屋に戻って頂きます」
厳しい顔で言われ、「私が自分で探しますから」とやんわり断っても、「ダメです。ワタシが怒られます」そう切り返されて、また振り出しに戻ってしまう。
引き摺られるようにして部屋へと連れ戻された私は、しばらく呆然と立ち尽くした後、
「いや、こんなんしてる場合ちゃうんやって」
また部屋を飛び出した。
……だけれども。
「あっ、また! お嬢さんが部屋から出た! おい、捕まえろ!」
今度は違うお兄さん達に追い回されることになってしまった。
そして、隠れているところをとっ捕まり、暴れる私をふたりがかりで抱え上げられ、再び自室へと連れ戻されてしまって。
広い室内で、またもぽつんと立ち尽くしながら、私は悟った。
――撒かないといけない人数が多すぎて、私一人じゃ脱走できない。
舎弟さんが言っていた。
『ぼっちゃん』が命じたんだと。
京介君、私が逃げ出さないよう、舎弟さん達に見張らせているんだ。
私が逃げだそうとすることなんか想定内、分かっていたんだろう。
京介君の掌で転がされているようで、ムカムカと腹が立ってくる。