Under The Darkness
13
悠宇とふたり、滞在先のマンションへ行く道すがら、隣接する事務所にも足を運んだ。
豪に攫われたことで仕事に穴を開け、いきなり消えたことを謝りたかった。そして、私のために居場所まで提供してくれた。
事務所に対してきちんとお礼を言いたかったんだ。
こぢんまりとしたオフィスビルの前でタクを降り、事務所の扉を開けた途端、担当の鈴木さんが両手を広げて駆け寄ってきた。
「心配したよ!」と、ぎゅうって抱きしめられて、心配してくれていたんだと胸が熱くなる。目の奥がじわりと熱を持ち、涙ぐんでしまう。
「す、鈴木さんっ、心配かけてしまって、ほんまにごめんなさい」
「うんうん、ちゃんと悠宇に話聞いたよ。ファンに追い回されて隠れてたんだって? お母様が亡くなってしまって一人だと危ないから、こっちにおいでって、僕、何度も言ってたじゃない。金城さんに写真撮って貰ってから美里ちゃん知名度上がってるんだから」
――今からでも遅くないから東京においで。面倒くらい見てあげるから。
心配そうな顔で鈴木さんはそう言ってくれる。
ありがたいと思いつつ、でも、それは出来ないのだと私は頭を振った。
「モデルの仕事は来年の3月までって契約なんで、このままここにおることは出来ません。ごめんなさい」
「心配だなあ。金城さんと一緒に中国行くって言うのは諦められない?」
「はい! 私、金城さんみたいなカメラマンになるのが夢なんで!」
私は顔を上げて意思を伝える。
ずっと決めてたことだから。
やっと掴んだチャンスなんだ。絶対手放しはしない。