Under The Darkness
「美里ちゃんはこれから先、芸能界でも充分活躍できる素質があるのに。中国へ行っても、いつ戻れるかはわからないんでしょ?」
「3年くらいって聞いてますけど、多分、金城さんの気の赴くままやと思います」
「やっぱ悠宇みたいにモデル1本で行かない?」
鈴木さんの言葉に、ありがたいと思いながらも頭を振り、否を返す。
「ママも応援してくれてたんで。私、金城さんにイヤがられても引っ付いてくつもりです」
「美里ちゃん入れて3人のアシスタントさんと行くんでしょ?」
「いや、ひとり増えて4人って金城さん言ってました」
「はあ。彼と行くっていうのが、僕は心配なんだよなあ」
女性もいるにはいるが、ほぼ男ばかりといっていい状況だ。
その中でも問題は当の金城さんだという。
私はその心配は皆無だと笑った。
「大丈夫ですよ。金城さん、女性には興味ない人なんで。ちなみに、今は悠宇を狙ってるって言ってました」
私の放った言葉に、悠宇の顔色が一気に変わった。
「ああ!? やめえ、みぃちゃん! 気色悪っ」
「ははっ。あ、鈴木さん、遅くなりましたが、マンション、手配してくれてありがとうございました!」
顔面蒼白になる悠宇を見て吹き出してしまう。
いかんいかんと口元をぎゅっと引き締めながら、私は鈴木さんに頭を下げて礼を言った。
鈴木さん、中国行きは諦めてもらえないのかと嘆息すると、仕事の顔に戻ってスケジュールを伝えてきた。
「ううん。ちゃんと仕事も入れてあるから、明日から撮影入って貰うからね」
「お金要るんで助かります!」
「明日、悠宇も美里ちゃんと同じ絡みだから。東京湾での屋外撮影。頼むね。はい、これ、マンションのキー」
私はキーを受け取り、「はーい」と悠宇とふたり満面の笑みでお利口さんな返事を返す。
「じゃあ、また明日ね」と手を振る鈴木さんに頭を下げて、私達は事務所を後にした。