Under The Darkness





 玄関先で、大量の荷物をドサッと置いた悠宇は、思い出したように「あ、そうだ」と声を掛けてきた。


「栞もこっちくる言うてたわ」


 その言葉に、新しく買ったエプロンの梱包を解く手が止まった。


「ほんま!? めっちゃ嬉しい! いつ!?」


「明日か明後日くらいには来よるんちゃうかな」


「やったあ!」


 諸手を挙げて喜ぶ私に、悠宇はうんざりとした顔で、


「オレは嬉しないけどな」


 大仰なため息をつき、そんなことを言う。


「なんでそんないけず言うん」


 犬猿の仲なのは知っているけれど、それでもふたり、気が合うってことはちゃんと知ってるんだから。

 むっと悠宇を睨んだら、「オレはいけずなんや」と、にやりと悪い笑みを向けてきた。


「ってか、みぃちゃん、さっきから何やってんの。手伝おか?」


「あ、助かる。これ開けて。かったいねん」


 調味料のビンの蓋を開けようと奮闘していたんだけれど、リタイヤすることにした。

 悠宇に「はい」と手渡す。

 いつも使っているヤツなんだけど、蓋が硬くてママも開けるの四苦八苦していたんだよね。

 受け取った悠宇は、カコッと簡単に開けてしまう。

 おおっと歓声を上げながら私はそれを受け取った。

 悠宇、褒めろとばかりにドヤ顔で私を見る。

 その顔が得意満面すぎて、ぷぷっと笑った。

< 222 / 312 >

この作品をシェア

pagetop